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『愛されるわたしになる』
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あるところにひとりの女性がいました。
「あーあ、愛されたいよ。なんで私っていつもひとりなんだろう……」
少し影のある雰囲気を持ったその女性がつぶやいていました。
その女性は、自分のことを愛してくれる人を求めていましたが、なかなかそんな王子様は現れませんでした。
そんな女性の元に、緑色をしたカエルが現れてこう言いました。
「なんでそんなに悩んでいるんだい? 愛されるって簡単だろ」
突然しゃべり出したカエルに驚き、女性はまぼろしを見ているのかもしれないと自分をなだめすかして心を落ちつかせから口を開きました。
「簡単じゃないわよ! 嫌われ者のカエルにはわからないでしょ! ほっといてよ」
カエルは「ケロケロ」と笑うとこう言いました。
「何言ってるんだい! カエルは愛されものだぜ。嫌われ者なんかじゃないさ」
女性は呆れた顔をして反論しました。
「何言ってるのはこっちのセリフ! カエルなんて醜くって自分でみてもおぞましいんじゃない? それなのに愛されものになんかなるわけないわよ」
それを聞いたカエルは驚いた顔をして答えました。
「おいおい! 人間ってのは本当に目がついているのかい? カエルは魅力的だぜ。
ふーん、なんでお前さんが愛されたいって言うのか分かった気がするぜ。よかったら愛される方法を教えてあげようか?」
『カエルになんて教わりたくないわよ!』と言いたい気持ちが溢れましたが、女性は『これはどうせまぼろしか夢なんだから』と自分に言い聞かせました。
「あらそう? じゃあ教えられるものなら教えてみなさいよ!」
「ケロケロ」とカエルは笑いました。
「いいぜ、じゃあはじめようか!」
こうして、カエルの愛され教室が始まりました。
カエルが質問をしました。
「じゃあ、まず聞いていいかい。
お前さんは自分のことをどんなふうに思ってるんだい?」
「んーと」と考えながら、女性は答えました。
「そうね、ちょっと抜けていて、少しトロいかしら……。
友だちは自分のやりたいことを見つけたり、結婚相手を見つけてどんどん先に行っているのに、私はやりたいことも愛してくれる人も見つけられないの」
悲しそうな女性の顔を見て、カエルは質問を重ねました。
「自分のことを好きかい?」
キッと顔をあげて女性は力強く言いました。
「好きじゃないわ! 好きになれる要素なんてないの!」
そしてうなだれてこう続けました。
「だからこんな私のことなんて、誰も好きにならないの……」
「ゲーコ」とカエルが大きくなきました。
「おいおい、それだよ。お前さんは自分が好きじゃないんだろ?
自分のことを好きじゃないのに、愛されるって感覚がわかるのかい?」
女性はハッとした顔をしました。
「あ……! 確かに、こんな私のことは誰も好きにならないって思っているわ」
カエルの顔が真面目になりました。
「自分のことを好きじゃなければ、いつまでたっても愛を疑うんだぜ。
『こんな私のこと、誰も好きにならない』ってことは、お前さんのことを愛してると言う人が現れたら、『どうせ私のことなんて好きになるわけがない』って思って無意識のうちに関係を壊しちゃうんだ。心当たりがあるんじゃないか?」
うんうんと大きく頷いた女性が言いました。
「あるわ!今までは付き合ったとしても『いつか終わりが来る』と思っていたし、その通りにどんどん関係が悪くなって別れちゃうの」
それを聞いたカエルは続けました。
「もしかして、お前さんは孤独だと思っていないかい?」
女性は答えました。
「ふと、思うことがあるわ……。私はどうせこのままひとりぼっちだって。
いずれ誰にも相手にされなくなって、一人で暗い部屋でこの世を去っていくって」
それを聞いたカエルは優しい声で言いました。
「わかるかい? それは単なる思い込みなんだ。でも、思い込みが現実を作るんだ。
お前さんにあるのは、孤独になるっていう恐れと、自分を好きじゃないっていう思いだ。
その2つが今のお前さんの現実を作っているんだ。
でも、もう変わりたいんだろ?
本気で変わりたいなら、今までと違う未来を創らないか?」
思い切り肩を落とした女性は、うんうんとうなずき小さく口を開きました。
「変わりたい。この先もこんな孤独感と愛されたいって思いながら愛されることのない思いをしていくなんてイヤ。変われるなら、方法を教えてください」
女性の思いをしっかりと受け止めてカエルは言いました。
「分かった。変わろう!
ただ長期戦になるかもしれない。けれども自分のことを信じて今から言うことをやって欲しい。
それは、自分の悪口を言わないこと。
そしてどんなことをお前さんがやっても認めるってことだ。
例えやろうと思ったことがうまくいかなかったとしても、挑戦したことを認めるんだ。
やれるかい?」
女性は「やるわ!」と大きな声で言いました。
それを見たカエルは「ケロケロ」と笑いました。
そこから今までと違う未来を創るための、女性とカエルとの日々がはじまりました。
数年後、幸せそうな顔をして純白のウエディングドレスに身を包まれている女性がいました。
女性の傍らには、女性のことを大切そうに暖かい眼差しで見つめるタキシードを着た男性がいました。
女性はカエルの教えを守り、自分を変えたのです!
自分を好きじゃないという思いは、どこかはるか昔に置いてきたような遠いことのように感じていました。
自分の悪口を言わない。
自分が何をしても認めてあげる。
それを守ってやってきたら、孤独だと思う感覚が薄れました。
そして、「愛しているよ」と言ってくれる男性に巡り合いました。
その「愛している」という言葉を受け取れるようになりました。
どこか自分に影を感じていたけど、今は影を感じません。
カエルした約束を守り通し、自分を変えたのです!
参加者のひとりが悲鳴をあげました。
「きゃー!! カエルがいる! 気持ち悪い〜」
それを聞いた女性はウインクしてこう言いました。
「カエルはそっとしておいてあげてね。
そのカエルは私自身なの。可愛いでしょ!」
カエルは「ケロケロ」っとまるで幸せだと言っているかのようになきました。
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